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2015年8月28日金曜日

手塩にかけた・・・

 先日、取引先の料理屋さんでの出来事です。

年配の御婦人が仲居さんに「おてしょ」を頂けませんかと頼みました。

言われた仲居さんは何のことかわからず「はい」と答えたものの主人に
「“あてしょ? ”が欲しいと言っておられますが」と小声で救いを求めました。
主人は少し考えた後、黙って小さな小皿を渡し持って行くように指示しました。
お客様が帰られたあと、その話でひとしきり盛り上がりました。

 男性の中には「てしょ」などと呼ぶ方もおられますが、皆さんは「おてしょ」
という言葉を御存知ですか? 御存知ない!それではお話しますね。

「てしょ」とは小皿の事を指します。関西の方で多く使われた言葉らしく家庭で
食事の時など“醤油のてしょ取って”などと使います。
これは醤油用の小皿を取って欲しいという意味です。“あてしょ”と聞き違えた
仲居さんは全く知らない様子で真剣に聞いていました。 

 昔、まだ食文化が貧しかった頃、今のようにソース、ケチャップ、マヨネーズ
など無く、主な調味料としては塩しかありませんでした。
醤油は中国の魚醤などから伝わったいう説もありますが、米と米麹を使う酒造りの
醸造技術が発達向上してから、原料を大豆に変えてできる味噌や醤油が庶民の間に
普及し日本食文化が大きく発達した様です。

 当時、料理膳には必ず少量の塩を盛った小皿が付いて出され、客人は一人一人が
自分好みの味に調えてから食したそうです。関西料理や京料理がなるべく素材を
活かして、薄味に調理されるのもそんな理由だと伺いました。

そこからこの塩を盛った小皿を「てしお」とか「おてしお」と呼ぶようになり
いつしか器そのものを「手塩」から「てしお」そして「てしょ」と呼ぶ様にに変った
と思われます。大皿から各自が取り分ける為の銘々皿も「てしょ」と呼んでましたが
昨今こんな呼び方を知っておられる方が減ってしまったと嘆いておられました。
 ただ料理人の世界ではこの言葉はまだ使われており、三番さん(三番板前:主に
煮物を担当し煮方とも呼ばれる)が花板さん(料理長)に味見をお願いする際など
「てしょ願います」などと言うそうです。

 この様に「てしょ」は小皿のことを指しますが、元々は料理に添えられた「塩」
を使って、食べる人自身が手をかけ自分好みの味に仕上げる意味から「手塩にかけて
育てる」など、他人の手を借りずに自ら世話をする意味に使われる様になりました。

また塩は不浄のものを清める意味もあります。
料理屋さんの玄関先に塩を盛る景色を見ることがあると思いますが外での禍が
入らぬ様願う気持ちが込められます。

私達は何代にもわたり酒屋を家業とし信頼の看板を汚さぬ様まさに「手塩にかけて」
“のれん”を守ってきました。
そして現代に生き残れる企業に成るべく、ジェノスグループを立ち上げました。

私達の会社に流れる精神はこの「手塩にかけ育てる」こころです。
私達と一緒に手塩にかけ、皆さんから愛される会社に育て上げましょう。
若い皆さんの力が必要です。


株式会社宇佐見商店
代表取締役  宇佐見 透

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