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2015年3月24日火曜日

乾杯が取持った中国での交渉成立

 もう18年ほど前、私が30歳代の頃の話になります(私も歳を重ねました・・・)。
 当時、私の業務ミッションの一部には、中国酒(主に紹興酒)の日本市場での拡売がありました。
 日本には横浜中華街という世界最大のチャイナタウンがあり、神戸や長崎にも同様の文化街があるだけでなく全国各地に必ずと言っていいほど中華料理店がありますので、そのマーケットでの販売競争は熾烈です。
 その市場の中で、訴求を図る商品の課題と問題点はラインナップの整備と仕様の統一で、お客様のニーズに合った酒質と価格、そして衛生面も含めた素材の変更と不均一な仕様の標準化でした。
 当時はまだ杭州(ハンジョウ)空港ができていませんでしたから、上海まで飛行機で~その後上海駅までタクシーで~上海駅から杭州駅まで列車で~杭州で一泊して貸切タクシーで紹興へ向かい、ようやく交渉の場へたどり着きました。

 ごく普通の工場視察をして、会食をしながらの協議となりましたが、長い長い歴史に培われた現地の生産者が、簡単に話を聞いてくれるはずもありません。
 中国の方が14人、私達日本人が3人、極めて静かな宴席です。
 小さなグラスに紹興酒が注がれたままになっていましたので、出直しを覚悟して、「では乾杯(カンペー)をしましょう。」と言った途端、場の雰囲気が変わりました。
 中国では、乾杯は文字通り、一気に盃を干すことを指します。
 私は、一気に盃を干しました。14人全員と1対1で乾杯しました(ちょっと辛かったですが・・・)。
 あっという間に賑やかな宴席になり、皆さんが大きな声でにこやかに・親しげに話しかけてくれました。お互い話している内容はよく解りませんでしたが、肩を組み合い、料理を分け合いました。
 「協議は終わり。要望は分かった。なぜなら我々が造っている酒を旨そうに飲んでくれたから。」-この言葉を聞いた時、交渉の成立を確信しました。
 まさに乾杯が取持ってくれた相互信頼の構図を身を以って体験でき、正直痺れました。

 中国では、酒類業界に関わらず、いまだに同様の慣習が残っています。
 乾杯は相互信頼の証でありその第一歩であること、酒類業界に携わっている身としてはちょっと嬉しいお酒を通しての人と人と交わりをこれからも大切にしていきたいと思っています。

 皆さんも、乾杯はそうした機会であると、捉える時もあるのでは?
 但し、飲み過ぎには注意しましょうね。


ジェノスグループ株式会社

代表取締役社長 清水隆義

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