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2015年6月18日木曜日

売り手市場の心得

 アベノミクスで景気が良くなっています。
 景気を判断する指標はいくつかあります。
 代表的なものとしては、消費者物価指数、鉱工業生産指数、新設住宅着工軒数などがあります。
 労働需給の側面では、完全失業率や有効求人倍率などがあります。

 「新卒学生の内定率」は、こうしたマクロ経済指標としては主流派にはなっていませんが、
この1~2年の状況はまさに新卒学生にとっては売り手市場で、企業側は「青田買い」や「囲い込み」という非常手段で、とにかく新卒学生の確保で他社に遅れを取りたくないというモードが全開です。(弊社ではそのどちらもやっていませんが)

 これは就職活動中の学生さんたちには一見朗報のようですが、実は怖~いことであるのです。

 それは、売り手市場の時期に入社した社員は、その後、来るであろう不景気の時には真っ先にリストラ対象になるという宿命にあるからです。(あくまで一般論です。弊社がそうだとは申しておりません。)
 時計の針を28年ほど戻しましょうか。


 私自身は学卒後、ある企業に新卒で入りました。バブル景気到来時には入社3年目でしたので、いわゆる「バブル入社組」には(かろうじて)含まれないのですが、その頃の大企業のリクルート活動といえば、とにかく内定を出した学生に逃げられないように、九州や沖縄、果ては香港やグアムのリゾートホテルに缶詰にして、競合他社の呼び出しに物理的に応じられないようにするなど、何でもありの作戦が展開されていました。
 これが学生を勘違いさせる元凶となるなど、当時は誰も思いもよらなかったのです。
 
 ところが、あれだけ良かった景気が一転し、1993年にバブルが崩壊すると、どの企業も急速に大リストラの嵐が吹き荒れました。
 それまで、終身雇用が日本的経営の大根幹とされ、まさか定年を迎えるまでに会社側から退社を勧奨されるようなことが、(仮に可能性であったとしても)あり得るのだということを誰もが微塵も考えてもいなかったのです。今から考えたら信じられないことですが、その時代の空気とはそういうものでした。
 ですので、パイオニア社が、個人成果の上がらない社員に「出社に及ばず」という辞令を出したという、ほんの1つの事例が、日本中を巻き込む大ニュースとなって、新橋や神田の赤提灯ではサラリーマン諸氏の話題を独占し続けたものでした。
 泥棒か殺人でもしない限り、会社をクビになるということなど考えたことも無かった日本の企業戦士に大きな衝撃を与えました。しかし、バブル崩壊の影響は甚大で、ほどなく、「働きの悪い社員はリストラ」が当然のこととなって現在に至るのです。(繰り返しますが、日本全体の状況であり、弊社の話ではありません。)

 さて、その大リストラブームで最も割を食ったのが、ほかならぬバブル入社組です。
 予想外の好景気で、人事部には「とにかく新卒を確保しろ」という至上命令を受けて採用した社員たちが、まっさきに厳しい目を向けられたのです。


 それから四半世紀経ったいま、20数年ぶりの好景気で売り手市場となった就職戦線ですが、入社してからも景気循環が不可避である以上、最後はどれだけ組織に貢献できる人材であるかが問われます。その「企業人としての市場価値」を形成していくのは、同じ企業の同期の仲間こそが最大のライバルであるという厳然たる事実を直視するとき、如何に自己を自分で高めていくかという日常の意識と小さな心がけの積み重ねになるのです。
 
 これはどの組織でも同じだと思います。ご健闘を祈ります。


日本ジェノス株式会社
代表取締役  上野 善久



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