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2015年12月11日金曜日

伝統を守る幕の内弁当

前回に続いて食べ物の話ですが、今日はお昼のお弁当です。
(自作ではなくて買う話です)

今日は中目黒駅の近くにある、大きなスーパーへ行きました。
ランチタイムのスーパーは主婦の買い物場所というよりも、
勤め人のための弁当販売場という感じで賑わっています。

品揃えの豊富さ、おかずの多様性、値段の安さ、こういう側面では
コンビニはスーパーにはかないません。

今日、手に取ったのは「折詰の幕の内」です。
こちらをごらんください。昔ながらのコンパクトな折箱です。
これが、紙で包んであります。



そうそう、こういう風情です。歌舞伎座とかへ行くと、この包みが何十個も積み上がっています。
コンビニ弁当のパック容器ではそうはいきません。(倒れてくる)











包みを開くと、こういう感じです。



本当の木材で作った折箱に入っています。これは、ご飯の熱を適度に逃がし、また木から出る成分のおかげで鮮度を保つ効果があるそうです。
(この弁当は安いから?か、蓋はボール紙ですけど、本来は蓋も木製)

歌舞伎座前・木挽町(こびきちょう) 辯松(べんまつ)と書いてあります。
なんでも、江戸時代創業で、日本で初めて弁当を庶民向けに売り出した会社とのこと。


蓋を開けます。












いや~! 懐かしい光景ですね~
蓋の裏に、ご飯粒がこびりついています。
同社のHPには、「ふたや折の底についた御飯をこそぎ取るのを、どうぞお楽しみください。」と書いてあります。(この作業がまたいい)

幕の内弁当の由来について書いていると長くなりますが、この「俵型のご飯」が1つのお約束です。これに申し訳程度の小さい梅干。
(盆栽に通じる小宇宙の精神がありそう)











おかず、見てください。これはもう、「お作法」の域に達している食材ばかりです。
卵焼、焼魚、蒲鉾。これを幕の内三種の神器と呼ぶ人もいるそうです。
卵焼きは出汁巻で、じゅわーと甘い汁気が多くて美味しいです。
魚は、めかじきの味噌焼きで、肉は薄いのですが、脂が乗っていてしっとりして、ほのかな味噌の風味が大変お上品です。

特に、蒲鉾ですよ、蒲鉾!
これが「おかず」として不可欠というのですから、これはもう文化遺産の領域ですね。(消費者のニーズとか、そういう次元ではない)

で、野菜の煮物。ごぼう、きゃらぶき、麩、椎茸、筍。
オールスター総登場ですね。(さやいんげんの緑が鮮やか)
お味のほうは、江戸流に甘くて濃い醤油味です。



これについて、HPに面白いことが書いてあります。
「弁松の弁当は味が濃すぎるとお感じになっているお客様、ごめんなさい。
でもこういう味なのです。
この味でなければだめというお客様、どうもありがとうございます。」

これが文化遺産の強いところです。昨日今日買ったお客より、ずっと永く買ってくれているお客を見るという姿勢です。

そして、最後に、香の物はがっつり濃い奈良漬、甘味として「切りいか」の飴煮がありました。

以上の構成のお弁当ですが、20歳前後の育ち盛りの人なら、3口くらいで一瞬で完食してしまうほどの分量ですが、いろいろものが少しずつたくさん入っていて、見ても食べても飽きることがありません。

本当は、汽車旅(電車でもいいですけど)で、缶ビールやワンカップと一緒に少しずつ時間をかけて食べるのが、何よりも大好きです。

旅情を誘うお弁当でした。ご馳走様でした。


日本ジェノス株式会社
代表取締役  上野 善久

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