私は「ボールを前に投げてはいけない」しかルールを知らなかったが、ラグビー好きの同級生が試合を観ながら事細かに説明してくれた。試合は白熱し私も惹き込まれた。全速力で走ってくる体重100㎏の相手に捨て身でタックルする迫力、随所に見られるサインプレー、役割分担された選手の鍛錬された連動性、それからすっかりラグビーファンに。卒業するまでに、そして社会人になってからも秩父宮や国立に何度行ったことか……。
さて、先日のラグビーワールドカップ、日本の一試合目南アフリカ戦。過去8大会で南アは通算25勝4敗、優勝2回。日本は1勝21敗2分、95年大会ではニュージーランドに145対17の記録的な点差で負けている。その日本が南アフリカに勝つとは……久々に心底感動した。
この試合、勝ち方も劇的だった。72分(ラグビーは80分)、29対29の同点、日本が反則、南アはゴールキックを選択して成功、3点追加され32対29。試合終了間際、今度は南アが反則、残り時間を考えればワンプレーで終わり。日本はゴールラインまで10m、ゴールキックかトライ狙いのプレーどちらを選択するか……五郎丸選手のゴールキックならほぼ確実に3点取れ同点で終われる。トライ狙いのプレーなら成功すれば5点入って逆転勝利、でも当然確率は低い、一か八かの選択、リーチマイケル主将はスクラムを選択、他の選手も異論を唱える様子無し。そして巨漢揃いの南アに押し勝ってボールを展開し結果トライに繋がった。逆転!!32対34。そのままノーサイド(試合終了)
翌日の報道で分かったことだが、この時、エディ・ジョーンズヘッドコーチはゴールキックを指示したらしい。多分この大会で勝ち進むために「確実に同点を」と考えたのだろう。でも主将はトライ狙いのスクラムを選択した。自信というより「ここには勝ちに来たんだ」という思いが強かったとのこと。
メディアは「奇跡の勝利」「歴史が変わった」と騒いだが、五郎丸選手は「ラグビーに奇跡は無い。必然の勝利」と言っていた(勝ったら言える)
スポーツ観戦は演出も筋書きも無いから余計な事を考えずに没頭できる。格好の気分転換。
でも、この試合の後は少し考えさせられた。あの時、リーチマイケル主将は、どうしてヘッドコーチの指示に反して、かつ失敗(その確率の方がはるかに高い)のリスクを負ってスクラムを選択したのだろうか。単に「勝ちに来たんだ」という思いだけではないだろう、「勝てたかもしれない」と後悔したくなかったのではないだろうか……とか。
この「歴史が変わった」一戦は、私にとってギリギリの局面での “選択” について示唆に富んだ試合だった。
ジェノスグループ株式会社
営業本部 債権管理部長 村下 肇
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